麺哲
回転限界、1時間待ちでも来店し続ける繁盛ラーメン店であるにも関わらず
麺、タレ、スープ、全部バイトにまで公開する“当たり前の凄い”ラーメン店
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僕は高校卒業してから、辻調理師専門学校を出ました。そこから、すぐ料亭に入ったのですが、いろいろ事情があって辞めました。そこからここでバイトを始めたのが最初のラーメン経験のきっかけです。
最初は正直ラーメンに全く興味なくて、時給が良くて家が近かったというだけの理由の志望でした。なので初めは本当に驚きの連続でしたよ。
週に2~3回同じお客さんを見かけて、そんなに常連さんというのは頻繁に来てくれるものなんだ、とかはじめは衝撃ばかりでしたね。
それから、僕は子供が好きなので、保育士の資格は無いけど、子供たちの為に給食作ってあげたいと思い、保育園の給食を作っていました。
大体2年ぐらい保育園で働いた後、介護に行くことになり、自分の想いと逸れてきたと感じ出していた頃、ここの親方に“戻ってきたら”というお話を頂いたんですよ。それから独立希望の社員という形でまた入らせてもらいました。僕が26歳になった頃でした。
けど、タイミングだけではなくて、最終的にここに来ることを後押ししてくれた理由は、“学べることがとても多い”と感じたんですよ。
まず1つ目にここのラーメンは何度食べても飽きないな、と思ったことがありました。毎日食べても飽きの来ないラーメンってすごいなぁ、って想いが1つ。僕が保育園で給食をやっていた間の2年間は大体毎週、週2回以上で来ていましたから、ここならやる価値があるな、と思っていました。
それと、うちの親方はもともと和食で修行していて、魚をよく使っていました。それを身近で学べるという事は魅力でしたね。
ここのラーメンのこだわりという点では、何より親方が言うラーメンは“麺ありき”だということ。
麺に名古屋コーチンの卵を練りこんだ麺を使っていて、それに合わせる為に名古屋コーチンのガラでスープを炊き込んでいます。
そこに昆布、かつお、さばの和風だしを使って麺の味を引き立たせています。この和風だしが本当に麺を活かしてくれているんですよ。和風だしというのはうどんやそばで使われていますでしょ?麺をおいしくたべるための工夫なんですよ。
なので、比較的うちはスープ自体をこだわるというより、まずは第一に麺。ここは徹底してこだわっています。けどスープも名古屋コーチンを使っているので、まぁ、出方は普通とは違うかも知れないですね。
こだわっているというよりは、当然の仕事をきっちりやっている、という感じですね。
スープの炊き方ですが名古屋コーチンと豚の背ガラだけでスープを炊いて、そこに先ほどお伝えした和風だしを合わせてやっています。
一緒に炊くやり方もあるんですけど、香りが飛ばないので、OPEN直前に合わせています。
炊く時間自体は3時間ぐらいですね。ただあくまでうちのラーメンの主は麺ですね。
元ダレに関しては、薄口しょうゆ、濃口しょうゆ、かつおとさば等を入れています。
うちのタレはバイトの人でも作っています。(えー!!)
なので、秘伝とかいうよりは、普通のタレですね。うちは全てオープンです。働き始めてすぐに教えていますよ。じゃないと、新しく入ってきた子が出来ないじゃないですか?
麺の打ち方も、タレの作り方もうちで働いている人にはバイトでも社員でも全て公開です。
珍しいんですか?笑
親方は覚えて半分、教えて半分という考え方なので、
麺は、麺野郎の方で作っています。うちの麺は 歯ごたえ、のどごし、味 という三大要素が自分たちの麺のやり方。 先ほども伝えたように名古屋コーチンの卵を練りこんでいるという事が歯ごたえを産んで、あと、平ザルで上げることで喉越しを守り、そして製麺段階で真空ミキサーを使っていて、真空状態で攪拌する事によって小麦1粒1粒に水分を行き渡らせ、麺のダレや、表面のざらつきを防ぎ、しっかり美味しくしあげます。この3点がうちの麺の大事なポイントです。
親方の言うようにしっかりやれば、温度と湿度さえ気をつければ後は機械なんで大体出来ます。ただ、麺打ちはバイトにはさせないと親方が決めています。それもやり方を秘密にしているとかでは全然なくて、単純に危ないので。そういうリスクがあるところは社員ですね。
社員でも“麺づくりにあたって、怪我しても命なくなってもいい覚悟が出来てるか?”という事を聞かれます。それぐらい緊張感持ってやれよ、っていう事だと思います。
他店さんのお話で、時々タレも何も大事な所を教えてもらえず卒業したとかそういう話を聞いたりすると、なかなか自分は理解できないですね。
教えてもらえない方が不思議やなぁと思います。意味あります?
麺野郎と麺哲では、全く違うラーメンです。こっちはラーメンメインで、向こうはつけ麺メインです。こちらは透き通ったスープで、比較的こってりスープが麺野郎ですね。ここの麺哲が2013年現在で10年目ですね。
1日大体120杯は越えています。それ以下になるのはあり得ないですけど、見て解るように、大きなゆで釜使って平ざるを使っています。カゴみたいな手ぼざるを使っていると、麺が泳がないので湯でムラが出来てしまいます。手ぼざるの内側はやすりじょうになってるので麺の表面に傷が入ってしまいます。 麺の表面に傷がいくと、喉越しが悪くなるんですよ。
そういう理由もあってうちはこの平ざるで麺を上げているので、丁数がさばけないんです。
もう、1日120は限界ですね。
わーって混んで並んでもらっちゃうと最後の人のラーメンが出るのってどんだけ頑張っても25分ぐらいかかっちゃうんです。更に替え玉している間は新規の人の麺放り込めなかったり、おかげで1時間待ってたよーとか、そういうお客さんも居ますね。ありがたいですね。
うちは本当リピーターが6割~7割ぐらいですね。大体入ってきはったら、“毎度”って挨拶です。
層としては、比較的万人ウケするラーメンだと思っていますので偏りは無いです。男女比でいうと7:3くらいですか。販促は全然やってないですね。
よく言われるのが、うちは麺硬めお断りって書いてるんですけど、これ本当に断っています。まず、自分たちが納得して一番美味しいというものを出したいんですよね。それを責任もっていつでもしっかり美味しいものをお出しする、それを守る為に申し訳ないですが、お断りさせて頂いているんですよ。和食料理では当たり前のことだと思うんですけどね。
鯵箱っていう、メニューがあります。これ、ラーメン屋には珍しいメニューだと思います。実際に数も1日6食しか出ないです。
けど、このメニュー実はしっかり理由があります。実はこれ社員教育メニューなんですよ。
日本は海に囲まれているじゃないですか。その中でも関西って特にいい魚が取れるので、関西にいる以上魚ぐらいさばけないとダメでしょ、っていうのが親方の考え方なんです。魚のさばき方で腹背背腹という基本のさばき方があるんですけど、アジがそれが一番やりやすい魚で、社員の練習と教育のために作ってるのがこのメニューです。実際出ないんですけど、ずっと残ってます。僕も今日ハモもさばきました。うちは、あくまで料理人という意識ですね。
うちのラーメンは麺も多いですよ。親方がとても食いしん坊って言ったら言い方悪いですけど、たくさん食べるのがすきなので、うちの美味しい麺をたくさん食べて欲しい思いから、結構量が入っています。チャーシューも3種類いれています。大きいのが肩ロース、中ぐらいのがSPFポーク、薄切りがロインショルダーチョップのレアチャーシューです。そこに繊維を切ってしまわないように、縦に切っている九条ねぎのしゃきしゃきが乗っかっているので、満足感があって食べ応えがあって、美味しい。
最高じゃないですか?^^
僕の今後の目標としては、店長になってすぐなので、店をもうちょっとしっかり落ち着いて麺をあげられるようにオペレーションの向上を頑張りたいな、と思っていますね。僕と同じような仕事が出来る人を増やしたいな、と思っています。
目標は30歳頃には、独立したいな、と思っています!
【田中店長 談】
取材スタッフより
「なんと、バイトさんでもタレから麺の作り方まで全て公開という、麺哲さん!親方の庄司さんのやり方を余す所なく学んだ店長の麺さばきは圧巻でした!実際のラーメンも、また食べたくなるオーソドックスの定番ラーメンで、チャーシューもたくさん乗っていて実に満足感あるものでした!是非、一度この麺あげさばきをごらんください^^」