麺屋 海神 新宿店
人と人との繋がりでここまでやってこれた。魚のアラのスープと塩だれ作りとの格闘を経て、2階でも今では下まで行列ができるラーメン屋に!
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私の祖父がもともとラーメン屋を経営していたんです。ここ十年くらいでラーメン専門という店は増えたと思うんですけど、当時はラーメン、餃子、炒飯がある中華屋さんという感じのお店が多くて、私の祖父のラーメン屋さんもそんな感じのお店でした。
だから、厨房に一緒に入ってラーメンを作ったり、餃子を作ったりしていたので、飲食店に対して馴染みがあったし、「いらっしゃいませ!」とか「ありがとうございました!」っていう人との触れ合いというのが幼少期から身についていたと思いますね。
だから、将来はラーメン屋というか飲食店を自分でやってみたいというのはずっと思っていましたね。
この「麺屋 海神」を開業するきっかけは、もとも主人がラーメン屋をやっていていろいろあって、その後を引き継いだという感じなんですが、その時に試行錯誤して作ったこの塩ラーメンを世に出したいという想いが強かったんです。
自分でも食べて美味しいというのはもちろんなんですが、自然なモノを食べてもらいたいというのが一番にありました。「麺屋 海神」のスープはとても素朴で、本当に魚だけで出来ているんです。そういう自然なラーメンを食べてもらいたいということでこのお店ができたんです。
私はすぐに主婦になったんですけど、子育ても終わり落ち着いてきた頃に、このラーメンを世に出していこうと思っていた時に、知り合いの方からこの2階の店舗物件を紹介してもらったんです。
新宿は、昔から馴染み深い街だったし、家も近いのでどうしても新宿に店舗が欲しいと思っていたんです。だから、2階で最初はビデオ屋さんだったし、下の階は今はもうないんですけど、大人のおもちゃ屋さんがあったので、「ここでラーメン屋さんなんかできるわけないじゃん!」と思ったんですけど、でも迷わずやったんです。不思議ですよね。笑
私はすごくプラス思考で、下の階は大人のおもちゃ屋さんだったから、そこの上にラーメン屋さんがあるっていうのは話題性もあるし、おもしろいからいいんじゃないかなってこの店舗を選んだんです。すごいでしょ。笑
内装なんかはズブの素人だから紹介してもらったんですが、その内装屋さんもラーメン屋さんの内装をやったことがない方で・・・いろいろなトラブルがあったんですけどね。笑
この「麺屋 海神」は、2007年の10月にオープンしたんですが、見切り発車過ぎてオープン6時間前にも「あれがない。これがない」って大変な感じでしたよ。スタッフもいないし、知り合いの方にヘルプで来てもらったりね。笑
1週間前には店で、最後の味の調整をしていたんですが、自分では味がわかっていても、この味でいこうという味が出せなかったり・・・命の塩だれは完成していたんですが、やっぱりスープと合わせるとちょっと違う・・・とか。スープにえぐみが出たりとか、見た目も透き通ったスープを出したいのに赤っぽいスープが出来てしまったりとか本当に大変だったんです。
だから、オープンした後も自分が上手くスープが炊けなくて店を閉めたりしたことも何回もありました。やっぱり、オープンの時に自分の納得できないラーメンを出してしまったら、もう二度とお客様は来ないですからね。もうほんと大変で。
この2階にラーメン屋があるってことをお客様は気が付かないですし、2階にわざわざ上がってくるというのはハードルが高いんですよ。だから、チラシを配っても受け取ってもらえないし・・・だから1回来てくださったお客様に美味しいラーメンを出さないともう来てもらえないって!
1人のお客様の後ろに何人のお客様がいるかってことですよ。やっぱり口コミが1番ってことで、良いモノしか出さないというのは絶対でしたね。
オープンの時は知り合いの方に来てもらったり、その日だけワンコインになるというチラシを配ったりしていたので、50人くらいは来てもら
やっぱり、路面のラーメン屋さんだと「1回入ってみようかな」ってなるかもしれないですけど、2階なので上がってきてもらうのはもう本当に難しいんです。だから、一元さんが「ラーメンでも食べようか」って入って来るようなラーメン屋ではないので、うちの店はピンポイントで入ってきてくださるお客様ばかりです。それは今も変わらずそうですね。
だから、上がって来てくださったお客様には、美味しいラーメンを食べてもらうのはもちろんで、満面の笑みでお出迎えして、私が大切にしている温かみのあるお店作りをしています。
麺は知り合いの製麺屋さんにお願いしていて、口当たりもそうですが、どうすればスープに絡むかを考えて作って頂いた麺で、それをずっと使っています。
ラーメン屋さんなので麺を召し上がってもらうのはもちろんなんですが、やっぱりスープも全部飲み干して帰ってもらいたいと思っていて、薬味も本当に素朴なんですが、白髪ねぎ、みょうが、大葉、はり生姜、糸唐辛子と一つ一つスープに合わせて食べてもらうと味の表現が変わって美味しいんです。そして最後に、福井県のへしこを使った焼きおにぎりをスープに入れると雑炊として最後まで食べてもらえるんですよ。
でも、へしこが苦手で「おにぎりはちょっと・・・」というお客様でもスープは飲み干して帰ってくださりますよ。
そこを目指してオープン当時から、「人数はどうでもいい。どれだけスープを飲み干して帰ってもらえるか」ということだけを追求していました。だから、スープを残して帰るお客様がいたらみんなでスープを味見して「今日は何が悪かったのか?」ってフィードバックしていましたよ。
スープはメインのアラを毎日5点張り出していて、日々変わるので味が毎日違うのは当たり前なんですが、その日に仕入れたアラを美味しく炊き出すスープがこの「麺屋 海神」のウリですよね。
最初の頃は、アラの種類によっては美味しくできなくてスープを捨てることもよくありましたけどね。
今だから信頼も得るようになってきて仕入れの協力をして頂ける魚屋さんもあるんですが、オープン当初は魚のアラを仕入れるのが大変でした。仕入れをする魚屋さんは目星も付いていたんですが、アラが足りないし、あの魚も試してみたいってなるから、朝早く起きて築地の市場に買い出しに行ってお願いして何度も何度も試していました。
だから、そこは結構私も舐めていたところですよね。何とかなると思っていたけど、何とかならないみたいな。笑
今はブレンドしていく中で合わない魚を抜いていって、アナゴを使っているんですが、アナゴを入れると甘くて上品な味わいになるんですよ。アナゴのアラなんか本当に手に入らないんです。だから、ネットとかで片っ端から調べて仕入れ先も飛び込みで開拓したりして。ほんと大変大変。笑
塩のかえしダレはもう秘伝というか極秘なので語れない部分が大半なんですが、美味しいですよ。笑
塩のかえしダレには、もう食材費にすっごいお金をかけましたよ。いろいろな土地からいろいろな食材を仕入れて試行錯誤して作ったんですが、灯台下暗しで案外身近に「これだ!」ってモノがあったんです。でも、そこに辿り着くまでにすっごい時間もお金もかかりましたよ。期間も1年以上はかかったと思います。
塩って塩だけ舐めても味が違うし、私は塩自体が好きで、その塩の旨みを出したラーメンをお客様に食べてもらいたいっていうのがありましたよね。
そうやって大変な時期もありながらやってきたんですが、お客様の来店数も階段のように伸びてきましたね。最初はチラシも配ったり、お客様からも「潰れんなよ!がんばれよ!」って言われたり、Hot Pepperに出してみたり、いろいろなことをしました。そういうのを繰り返していきながら、今では階段の下までお客様に並んで頂けるようになりましたね。
だから、最初の頃に来て頂けてた常連さんからは、「もう入れなくなっちゃったじゃん!笑」と言われてたりもしますから、ちょっと残念なところもあるんですけどね。
だから、人から人に伝わって広がっていったという感じです。
やっぱり、学生の子達だと社会人になってその同僚を連れてきてくれたり、その同僚の人が友達を連れて来てくれたり、本当に人と人との繋がりでお店が続けられると思うんです。
1年に1回絶対来てくれる方もいますし、本当に人との繋がりを大事にしていきたいと思っています。
このお店は女性にも食べやすいラーメンなので、女性と男性比率でいうと50%、50%くらいという感じです。お店が女性だけで満席になる時もよくありますよ。
だから、人との繋がりを大事にしたいからしっかりとお客様との会話ができるように食券機は置いていないですからね。
この新宿の「麺屋 海神」は塩一本でやってきて、本当に大変だったんですが、塩に絞り込んだからこそ良かったなと思う部分が大きいんです。だから、もう一店舗を出すなら違うラーメンを出したいというのがあって、“あさりとはまぐり”の美味しいラーメンができたので、それをお客様に食べてもらいたいということで2010年に2号店を吉祥寺に出したんです。
この、吉祥寺もまた2階の物件で辺鄙なところなんですけど、ちょっとずつちょっとずつ階段式にお客様が伸びてきています。それはスタッフのみんなのおかげですよ。
やっと、この「麺屋 海神 吉祥寺店」の“あさりとはまぐり”のラーメンが徐々にお客様にも受け入れられてきたので、これを伸ばしていくと共に、今度はまた違う店舗で醤油ラーメンに挑戦をしたいと思いますね。あと、魚のアラをメインでやっているのでお酒から始まり、最後はラーメンで〆という料理屋さんが持てたらいいなぁ~と思っています。これは、もっともっと先の夢ですけどね。
【遠藤店主 談】